園長のお話し

「コチャック先生と子どもたち」

 

 - 井石 彰

8月は私たち日本人にとって戦争の悲惨さを思い、平和の大切さを覚えるときです。その戦争ではたくさんの子どもたちも犠牲となりました。世界の各国が対立を深めている今、子どもたちと共に日本と世界の平和を祈らずにはいられません。

私の尊敬する人に、かつてナチス・ドイツによるホロコーストが行われる中で、ユダヤ人の子どもたちと共に生き、そして死んでいった一人の教育者がいます。その人はヤヌシュ・コルチャックと言います。ポーランド人で「コルチャック先生」と呼ばれて、子どもたちから慕われていました。彼ははじめ小児科医として子どもたちのために働き、その後、孤児となったユダヤ人とポーランド人の子どもたちが安心して生活し学べる二つの「ホーム」を設立して、子どもたちの教育に尽力しました。そこで、彼が大切にしたのは自由な雰囲気の中で、子どもたちが自主的に色々なこと決めて、取り組んでいくことでした。それは、子どもたちの人格を尊重した画期的な教育でした。しかし、そのような子どもたちとの生活も、ナチス・ドイツのポーランド侵攻によって奪われてしまいました。そして彼は、自分だけが助かることを望まず、1942年8月にユダヤ人の子どもたちと共に強制収容所に移されて、ガス室で殺されました。

戦後、ポーランド政府は「コルチャック先生」の思いを受け継ぎ、国連に「子どもの権利条約」案を提出しました。この条約は1990年に国際条約として発効し、日本も1994年にこの条約を批准しました。その条約は、子どもたちの「生きる権利」(子どもの命が守られること)、「育つ権利」(子どもの成長のための医療や教育、生活への支援を受けること)、「守られる権利」(子どもが暴力などから守られること)、「参加する権利」(子どもが自由に意見を表すこと)を守るように定めています。子どもたちのこれらの権利が守られる世界こそ、平和な世界です。子どもたちとその世界を祈り求めたいと思います。

  園長 井石 彰